システム思考とSTAMP

世の中のいろいろなモノやコトを「システム」として考えることと、その道具の一つであるSTAMP/STPAについて。

システム理論と「色即是空」

仏教に、「色即是空」という言葉があります。般若心経の大事な一節だそうです。

 

色即是空の意味を調べてみると、次のような説明がありました。

(引用元:色即是空 空即是色の意味とは|知れば仏教は面白い!わかりやすく色即是空の意味を解説 | 神仏.ネット (shinto-bukkyo.net)

 

「色」の意味とは、この世の様々なモノや現象のこと。
匂い、音など認識できる様々なものを含みます。

「空」の意味とは、実体がないこと。唯一不変の存在はこの世にはないということ。

そして、色即是空の意味は、

「この世のあらゆるモノや現象は、実体がないのだ」

となります。

 

そして、色即是空の意味が、楽器の「琵琶」に例えて説明されています。

琵琶という楽器は、この世に存在するモノであり、「色」に相当します。琵琶特有の美しい音色を響かせる「存在」です。

琵琶という楽器には、弦があり、その弦を張る木があり、弦を弾くバチがあり… などなど、様々な要素があります。これらが巧妙に組み合わされた結果、「琵琶」という楽器になっています。

琵琶を、これらの要素に分解してしまえば、「琵琶」という楽器の存在(実体)はそれらの個々の部品にありません。

 

琵琶という楽器(=色)は、分解したら実体がなくなってしまう、「空」である、というのが「色即是空」の意味のようです。

 

この説明を読んで、これは、「創発性」の概念と似ている、と思いました。

 

創発性は、一般システム理論の重要な概念で、システムの構成要素一つ一つには存在しない性質が、それらを組み合わせたときに初めて、「システム」全体の性質として現れることを指します。

システム全体の性質(創発性)は、個々の要素に還元することはできない。個々の要素を見ても、それらが組み合わされたシステム全体の性質(創発性)を演繹的に推論することはできない、ということを言っています。

 

琵琶の例でいえば、「琵琶」という楽器が創発性を持ち、それを生み出す要素が弦や木やバチだということになります。

 

一般システム理論は、ウィーンの生物学者、ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィによって提唱された理論です。

仏教で言っていることが、ヨーロッパで生まれた学術理論と一致しているとは、なんという偶然だろう、と、思いましたが、学問とはこの世界の真理を探究するものであるならば、同じく真理を探究する宗教と共通性があるのは、当然のことかもしれません。

 

おまけ

この世界に存在するモノは、分子、原子、電子、と分解していけば、最後は「粒子」でもあり「波」でもあるように人間には見える不思議なもの、エネルギーとしかいえないものになるようです。

そのようなものが組み合わさって、この世界のあらゆるモノができている。例えば、私たちの身体もそうやって「エネルギーが巧いこと組み合わさってできている」なんて、本当に奇跡のように思えます。

 

「色即是空」は、「色即是空、空即是色」と続くようです。

「空即是色」は、色即是空と逆向きのことを言っています。

分解してしまえば「空」であるのだが、実体のない要素が組み合わさった結果、「色」に成る、ということのようです。

 

このことは、「因縁」という考え方にも関係するようです。

「因」は直接的な原因で、「縁」は間接的な原因を意味します。

この世界のあらゆる物事は「因縁」によって生じている、という考え方だそうです。

 

「私」という人間(=色)が存在するのも、両親から生まれ(=因)、様々な出会いや経験(=縁)によって今のような存在に成っている、ということです。

 

素粒子(エネルギー)が集まって、星ができたり、生物ができたりした。「この世界」は、どうして(なぜ)そうやってできたのか、本当に不思議です。